当記事ではフリースタイルフットボール専門店KAGARIのブランド創設者であるTETSU自らがインタビューに答えました。
KAGARI—ストリートに灯るかがり火
夜の公園、自販機の灯りが足元を照らす。静寂の中、ボールが地面を弾く音だけが響く。このシーンは、かつて自分が過ごした夜の象徴だ。
TETSU「リフティングが好きだった。ただそれだけだったんです」
そう語るのはKAGARIの創設者。彼は幼い頃からサッカーをする中で、フリースタイルフットボールの面白さに魅了され、その世界に没頭していた。だが、練習を重ねる中で、一つの違和感があった。
TETSU「日本では、自分が求めるボールが手に入らなかった。あの感触、あの跳ね方、あのグリップ感……どれを取っても、理想に届かなかったんです」
ならば作ればいい。そう思い立ち、彼はゼロからプロジェクトを立ち上げた。しかし、ボールの開発は想像以上に困難だった。
TETSU「形にするのが大変でした。製造方法、素材、バランス……一つ一つ試行錯誤して、ようやく納得のいくものが完成しました」
こうして生まれたのが、KAGARIのボールだ。こだわったのは、リフティングのしやすさ。そして愛されるデザイン性。
ストリートに生きる「かがり火」と「黒猫」
ブランドの名前「KAGARI -かがり(篝)」には、彼の原体験が刻まれている。
「夜の公園やストリートで練習するフリースタイルフットボーラーは多いですが、彼らにとって自動販売機の明かりや、わずかな街路灯はかがり火のような存在です。私自身もそうした明かりのもとで練習を重ねてきました。その光が、闇の中で技を磨く僕たちの支えになっていると感じ、このブランド名にしました」
さらに、ロゴに取り入れた黒猫も、ストリートの象徴だ。
「野良の黒猫って、どこか孤高な感じがするじゃないですか。自由で、しなやかで、どこにでも現れる。ボール1個で自分自身を表現できるフリースタイルフットボーラーもそういう存在だと思うんです。だからKAGARIには黒猫がいるんです。」
プロダクトのこだわりと未来
KAGARIのボールは、リフティングのしやすさを追求している。だが、単なる機能性だけではない。
「ボールは、フリースタイルフットボールの魂そのものです。だから、持ったとき、蹴ったときに、直感的に『これだ』と思えるようなものにしたかった」
競技のサッカーを続けてきた彼だからこそ、KAGARIのボールを生み出すことができた。
「21年以上サッカーを続けてきて、今もなお現役でプレーしています。その経験があるからこそ、サッカーボールとリフティングボールの違いを理解しているつもりです。ただ蹴るだけのボールではなく、リフティングに適した構造と感触を追求しました」
ただのスポーツブランドではない、KAGARIはストリートで生まれ、ストリートに根付いていくブランドになるだろう。そんなKAGARIのボールを、どんな人に使ってほしいのか。
「第一線で活躍するプロのフリースタイルフットボーラーから、今日はじめてフリースタイルフットボールを始めた、というような初心者の方にも使っていただきたいです。ボールがかっこいいから、そんな理由でもいいので、誰かのきっかけになれるような商品を展開していきたいです」
日本発、そして世界へ
KAGARIの目標は、日本で最も認知されるフリースタイルフットボールブランドになることだ。そして、さらなる夢がある。
「いつか、世界の大会でKAGARIのボールを使っている人がいたら最高ですね」
だが、その広め方にも彼なりのこだわりがある。
「広告費を大量に投じてブランドを押し出すこともできます。でも、それじゃ面白くない。KAGARIは、ストリートで人伝に広がるブランドにしたいんです。本当にいいと思った人が、仲間に勧める。そうやって広まっていくのが理想です」
静かな夜、ストリートの片隅で、KAGARIのボールが弾む音が聞こえる。
その音は、やがて世界へと響き渡るのだろう。